被告人 ウォルマート

  『被告人 ウォルマート』
  −市民、顧客、従業員、納入企業等による 反社会的行為との戦い− 

著者: アル・ノーマン

訳者南部繁樹・中澤容子

発行: 叶蜻芟o済界


本書は、ウォルマートの企業規模がさらに拡大するのに伴い、住民、顧客、従業員、納入企業などに対する各種の社会的問題が顕著化し、それらの問題が近年、法廷の場に持ち込まれている現状を踏まえ、著者アル・ノーマンが語る「ウォルマートに対する訴訟の実態を詳述したもの」である。

著者は、それらの問題が一日も早く解決することを望みつつ、法廷論争となっている訴因を13項目に分類し、訴因毎に現実の裁判事例を紹介している。

著者は本書の始めと終わりに、現実に起きている問題を解決するのは「購買者である私たち一人ひとりの意思と行動」であることを強調している。私たちは、経済の成長と地域の発展を同一視しがちである。しかし、一時的な可処分所得や税収の増加のみが重要なのではない。新しいものを導入することは将来に対する責任も同時に皆が背負うのである。また、衣・食・住・労働・交通などの物理的欲求と併せて、美・文化・健康・安全などの心理的欲求も十分に満たされなければならない。これこそが生活の質(Quality of Life)を確保することであり、今日世界中が目指すサスティナブル・デベロップメント(Sustainable Development)を実現するまちづくり・地域づくりといえよう。

著者曰く、判断は私たち一人ひとり。であるならば、私たちは正しい情報、正しい現実を知り、正しい判断を後世の人々のために勇気を持って行わなければ成らない責務がある。本書は、現実を正しく知ることの重要性と、併せて、問題解決に向けて行動することを強く願っているものと理解したい。

我が国では、時正しく、平成18年5月24日に都市計画法改正案、5月31日に中心市街地活性化法案が可決された。政府は中心市街地空洞化の原因を大型店の郊外出店を含めた総合的な都市問題であるとした。私たちには安易な判断は許されないことを本書の内容から学びたい。

南部 繁樹